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そもそも食品包装用ラップフィルムとは?
食品包装用ラップフィルムとは、食品の保存や調理などに使用する合成樹脂製フィルムのことです。空気や水を通さず、くっつきやすい性質があるため、食品を包んだり、食器にかぶせたりして、食品を保存・調理する際に役立ちます。
主に薄い膜状になっていて、紙の芯に巻かれた状態で販売されています。
食品包装用ラップフィルムの品質を確認するには?
食品包装用ラップフィルムの品質はパッケージの記載で確認できます。東京都では、東京都消費生活条例に基づく品質表示基準によって、以下で紹介する項目の表示が義務化されており、表示内容も細かく定められています。
品名は「食品包装用ラップフィルム」と表示すること。
●原材料名
原材料名は、合成樹脂加工品品質表示規程(平成9年通商産業省告示第671号)第2条第1号に定めるところにより表示すること。
●添加物名
ここで添加物とは、合成樹脂の製造、加工、改質等の目的のために添加し、かつ製品に残留している物質をいう。
添加物名は、ラップに占める量の割合の多いものから順に、物質の名称又は当該物質の属する類の名称を表示するとともに当該用途名を括弧書することにより表示すること。
●寸法
寸法は、幅についてはセンチメートルの単位で、長さについてはメートルの単位でそれぞれ単位を明記して表示すること。
寸法を表示する場合の許容範囲は、幅、長さを表わす数値のプラス4パーセント、マイナス2パーセントとすること。
●耐熱温度
耐熱温度は、ラップを通常取り扱う場合と同程度の荷重を加えた場合に、当該ラップの原形に異状を生じない最高の温度を表示すること。
●耐冷温度
耐冷温度は、ラップを通常取り扱う場合と同程度の荷重を加えた場合に、当該ラップの原形に異状を生じない最低の温度を表示すること。
●使用上の注意
使用上の注意は、次のア及びイについて必要な表示をすること。
ア 火のそばに置かないこと。
イ 電子レンジ用として使用できないものは、電子レンジで使用できない旨、電子レンジで使用できるものはその使用形態や内容物に応じて注意すべき事項。
●事業者の氏名/名称・住所
・表示義務者であるラップの製造業者の氏名又は名称及び住所を表示。
・販売業者が製造業者との合意等により製造業者に代わって品質表示に関する表示事項を表示することとなっている場合は、 販売事業者を表示責任者とすることができる。
引用:東京都「東京都消費生活条例に基づく品質表示(家庭用品)」「ラップ(食品包装用ラップフィルム)品質表示実施要領」
食品包装用ラップフィルムを製造する事業者は、基本的に上記で紹介した、東京都消費生活条例に基づく品質表示基準に則った表示をしています。
食品包装用ラップフィルムの原材料
食品包装用ラップフィルムはさまざまな合成樹脂から作られています。
【主な原材料】
ポリ塩化ビニリデン(PVDC) | 塩化ビニリデンを主成分として作った合成樹脂 |
---|---|
ポリエチレン(PE) | エチレンを主成分として作った合成樹脂 |
ポリメチルペンテン(PMP) | メチルペンテンを主成分として作った合成樹脂 |
ポリ塩化ビニル(PVC) | 塩化ビニルを使用した合成樹脂 |
ポリプロピレン(PP) | プロピレンを主成分として作った合成樹脂 |
NEWクレラップの原材料はポリ塩化ビニリデン
NEWクレラップの原材料はポリ塩化ビニリデンが使われており、次のような特長があります。
- 乾燥や湿気から守る 水蒸気を通しにくい素材なので、食品の乾燥を防ぎ、野菜や果物などのみずみずしさを保てます。また、水分を嫌う食品がしけるのを防げます。
- 酸化を防止する 酸素を通しにくい素材なので、酸化による食品の変色や風味の低下を防ぎ、鮮度を保ちます。
- においうつりを防ぐ 食品の香りを保ち、他の食品ににおいがうつるのを防ぎます。
- ピッタリくっつく 密着性の高い素材なので、食品や食器にピタッと密着し、しっかり包みます。
- 熱と低温に強い 熱にも低温にも強い素材なので、包んで冷凍保存していた食品をそのまま電子レンジで解凍できます。
- 切りやすい
食品包装用ラップフィルム素材別物性比較
参考までに、家庭用の食品包装用ラップフィルムに使われている代表的な原材料の物性比較を一覧でご紹介します。一言でラップと言っても、原材料が違うと大きく性質が異なることが分かります。用途に応じて、求める性質も変わりますので参考にしてください。
材 質 特 性 |
ポリ塩化 ビニリデン (NEWクレラップ) |
ポリ エチレン |
ポリ塩化 ビニル |
ポリエチレン・ ポリプロピレン (5層) |
ポリメチル ペンテン |
試験方法 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
酸 素 透 過 度 ※1 |
86 食品の 酸化を防ぐ |
16,000 | 11,000 | 15,000 | 190,000 | JIS K7126-2 (23℃、85%RH) |
単位= cm3/m2・day・atm 数値が小さいほど酸素を通しにくい |
水 蒸 気 透 過 度 ※1 |
19 食品の みずみずしさを保つ |
35 | 520 | 45 | 340 | JIS K7129-B (40℃、90%RH) |
単位= g/m2・day 数値が小さいほど水蒸気を通しにくい |
耐 熱 温 度 |
140℃ | 110℃ | 130℃ | 150℃ | 180℃ | 東京都消費生活条例の規定に基づく方法 | パッケージ表示値 |
耐 冷 温 度 |
-60℃ | -70℃ | -60℃ | -60℃ | -30℃ | 東京都消費生活条例の規定に基づく方法 | パッケージ表示値 |
※1 (財)化学研究評価機構 高分子試験・評価センター立ち会いの下、弊社樹脂加工研究所にて試験を実施(報告書番号T-150052556-001)。同素材で数種類のラップを評価した場合は、平均値を記載
※数値は代表値であり、保証値ではありません
食品包装用ラップフィルムは安全なの?
食品包装用ラップフィルムの安全性は食品衛生法に基づく管理によって守られています。具体的な基準は以下の5つです。ここではNEWクレラップに使われているポリ塩化ビニリデンを例に、内容を確認してみましょう。
①一般規格および素材別の個別規格
プラスチック製器具・容器包装の規格基準として、一般規格と素材ごとの個別規格が定められています※1。ポリ塩化ビニリデンについても個別規格の中で基準が設定されており、「材質試験」と「溶出試験」をクリアすることが求められるようになりました※2。
材質試験 | 食品に接するプラスチック製品に含んではいけない物質の種類とその基準値、試験方法を定めたもの。 |
---|---|
溶出試験 | プラスチック製品から溶け出して食品にうつる物質の総量を規制するための規格と、試験方法を定めたもの。 |
※1 1959年(昭和34年)の厚生省告示第370号
※2 1980年(昭和55年)の厚生省告示
②ポジティブリスト制度
令和2年(2020年)6月1日に改正食品衛生法が施行され、製品に使用できるポリマーと添加剤が国のポジティブリスト制度で管理されるようになりました。
なお、ポジティブリスト制度とは、使用を認める物質をリストアップし、リストにない物質は使用を禁止する制度のことです。
③適正な製造管理
食品衛生法第3条第1項に基づく「食品用器具及び容器包装の製造等における安全性確保に関する指針(ガイドライン)」(平成29年7月10日付け生食発0710第14号)に沿って定められた規範です。ポジティブリストで定められている材質の器具や容器包装を製造する事業者は、取り扱う製品およびその使用方法に応じた製造管理を行う必要があります。
④合成樹脂製器具・容器包装を販売、製造、輸入する事業者の情報伝達
合成樹脂製の器具や容器包装と、その原材料がポジティブリストに適合していることが確認できる情報を事業者間で伝達しなくてはなりません(令和2年6月1日より施行)。
⑤器具・容器包装製造事業者の届出制度
ポジティブリストの対象器具および容器包装の製造事業者は、管轄の保健所に営業届出をする必要があります(令和3年6月1日より施行)。かつて食品衛生法では、地方自治体が器具や容器包装の製造事業者を把握する仕組みがありませんでした。そこで、届出によって製造事業者を把握し、ポジティブリスト制度の監視指導を行うことになりました。
ポリ塩化ビニリデンを例にしましたが、それ以外の原材料を使用した食品包装用ラップフィルムも、①~⑤をクリアする形で製造することで安全性が保たれています。
食品包装用ラップフィルムの環境への影響は?
紹介してきたように、食品包装用ラップフィルムは人体へ悪影響を及ぼさないよう法律や規制が整備されていますが、環境面への対策もしっかりと取られています。
焼却時のダイオキシンは問題ない
塩素系の物質を焼却するとダイオキシンが発生するイメージがあるかもしれません。ただしこれは300~500℃程度の温度で燃焼させた場合です。現在、各自治体の廃棄物焼却炉では、800℃以上で焼却することが義務付け(※)られているため、現在の焼却条件では、ダイオキシンは問題ありません。
※廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に基づく廃棄物処理法施行令(政令)及び廃棄物処理法施行規則
ポリ塩化ビニリデンは省資源に役立っている
NEWクレラップの素材であるポリ塩化ビニリデンは、食品包装用ラップフィルムの素材の中でも、少量で十分な食品保存効果を得られる素材です。
例えば、ポリ塩化ビニリデンを他のフィルムに薄くコートし、酸素の透過を減らすといった方法でも活用されます。逆を言えば、ポリ塩化ビニリデンでコートせずに同程度の酸素バリア性を得ようとすると、フィルムの厚みが必要になるということです。樹脂の量を抑えられるため、製造に必要なエネルギーや排出ガスなども少なく抑えられます。
また、ポリ塩化ビニリデンの主な原料は塩とエチレン(石油の熱分解でできる気体)で、その7割を塩が占めます。塩は地球の資源の中でも豊富に存在するため、ポリ塩化ビニリデンは環境への負荷が少ない素材だと言えます。
<監修者プロフィール>
株式会社クレハ 包装材事業部 企画開発部
佐山 弘典
企画開発部では、NEWクレラップを始めとした家庭用品を通じて消費者の皆様の家事を手助けするべく、新商品の開発を行っています。