お塩は、
素材の味を引き立てる名脇役
私の母は料理がとても好きで、子どもの頃からさまざまな料理や食材、調味料などに触れる機会が多くありました。その影響もあってか、私も食に対する関心が深く、学校を卒業すると大手食品メーカーに務めました。ある時、沖縄への移住を機に、塩専門店を運営する会社へと転職しました。そこで、塩によって味わいが違うこと知り、とても驚きました。学べば学ぶほど、奥が深い塩の世界にのめり込み、もっと多くの人に塩の魅力を知ってもらいたいと思ったのが、ソルトコーディネーターになったきっかけです。
塩は、単体で食べることは殆どありません。主役にはなれませんが、素材の味わいを引き立てる、決して欠かすことのできない名脇役です。素材に合う塩を選ぶことで「ぼく、実はこんな性格だったんだよ!」という隠れた特徴を引き出すことができて、とてもおもしろいんですよ。
頑張るときは、
おばあちゃんのおにぎり
おにぎりの思い出といえば、子どもの頃によく食べていたおばあちゃんのおにぎりです。幼稚園から小学生の頃まで、おやつはいつもおにぎりした。お腹を空かせて家に帰ると、おばあちゃんが温かいおにぎりを握ってくれました。具材は自家製の梅干し。塩が吹くほどしょっぱい昔ながらの味です。そこに粗塩をつけて、“ギュッ ギュッ” と、しっかりと握ったテニスボールほどの大きさが2つ。のりも、ごはんと一緒に ”ギュッ” と巻きつけるため、しっとり食感が定番でした。
中学生になると、受験勉強のため夏期講習が始まりましたが、いつもおにぎりを持たせてもらいました。おにぎりの具材をリクエストすると、2つのうち、1つはやっぱり定番の自家製の梅干し。お腹が減った時や、頑張りたい時、いつもおばあちゃんのおにぎりが側にありました。
おばあちゃんのおにぎりはシンプルでしたが、住まいが築地の近くだったこともあり、材料はどれも良質なものだったと思います。それから、衛生面に気遣って石鹸でしっかり手洗いをしていたことで、おにぎりといえばほのかな石鹸の香りも一緒に思い出します。
大人になって
自分で作るおにぎりは、
どこか懐かしい
大人になって、プロの職人さんが作るおにぎりを食べるようになりました。お米がふんわりとして、口の中でほどけるおいしさに、とても驚きました。今では居酒屋などに行くと、お茶漬けでもなく、炒飯でもなく、おにぎりを頼んでしまうほど、ふんわりとしたプロが作るおにぎりが好きになりました。それでも、やっぱりプライベートで自分のために作るおにぎりは、おばあちゃんと同じように “ギュッ ギュッ” と、しっかりと握ったもの。のりも、相変わらずしっとり派です。
おにぎりのようにシンプルな料理でも、塩にこだわるとおいしさが変わります。もちろん、お野菜やお肉も、切ったり、焼いたりして、素材に合う塩を合わせるだけで驚くほどおいしくなります。同じ食材でも、塩を変えてみると違う味わいになるので、試してみると新しい発見があるはずです。塩の使い分けが出来るようになれば、料理は簡単に時短が可能になってくと思います。これからも、少しでも多くの方に、塩の魅力をお伝えできたらと思っています。